イライラはいろいろな病気の症状です
①イライラの原因は脳神経の過剰な反応性亢進です
②過剰な大脳賦活型の活動がイライラの原因となり得ます
③原因となる神経伝達物質は、ドーパミン、アドレナリン、セロトニンなど全てです
④精神科の治療薬で副作用としてイライラがでることもあります。
⑤この場合の治療としては原因を特定して除去すること大切です。
⑥イライラを主症状とする精神疾患には双極性障害が代表的です。
⑦この場合の治療としては気分安定剤、抗てんかん薬等の処方を行います。
⑧イライラは放置せず、専門家の診療を受けることが大切です。
双極性障害
◎双極性障害は、あまり馴染みのない病名かも知れませんが、実は「躁うつ病」と呼ばれていた病気のことです。日本では躁うつ病と呼んでいましたが、用語を世 界的に統一しようという流れのなかで、名称が変更され、双極性障害となりました。この双極性障害は、統合失調症(以前は精神分裂病と言われていた)と並ん で二大精神疾患の一つで、気分障害のひとつでもあります。
◎双極性障害の“双極”とは、気分が両極端の状態に交互にぶれることを意味します。一方の極は躁状態といって、気分が爽快で、元気いっぱいで、意欲満々の最 高の状態であるのに対し、もう一方の極はうつ状態といって、憂うつで気分が落ち込み、意欲がない最低の状態をいいます。双極性障害では、この躁状態とうつ 状態が交互に繰り返して現れます。どちらの症状が先に現れるかは人によって違い、また生涯の発症回数も人によって異なります。
◎ただし双極性障害の場合、躁やうつがこのようにはっきり現れていれば、双極性障害と診断がつきやすいのですが、躁が軽いタイプの場合、単極性のうつ病と誤 診されるケースが非常に多く認められます。その場合、うつ病の治療を続けますので、結果的に病気はなかなか治らないことがあります。現在、うつ病の治療を きちんと受けていていながら治らない場合、じつは双極性障害だったということは十分にあり得ることです。
◎このように診断が難しいのが双極性障害の特徴です。初診で、単極性のうつ病なのか、それとも双極性なのか、最近注目されている非定型うつ病なのか、それと もまったく別の病気なのか、専門医でも診断に悩むところです。それはいろいろな理由によりますが、これまで日本の精神医学は、長い間、臨床や研究において は統合失調症が中心であったため、双極性障害についてはあまり焦点が当てられなかったという側面があります。統合失調症に比べると、双極性障害の躁状態や うつ状態は軽い病気としか受け止められていなかったのです。
◎また、躁うつ病という病名が使われていた時代には、医療現場では少なからず診断や治療において混乱が生じていたことも事実です。そのひとつは、躁うつ病の うつ状態と、うつ病のうつ状態の違いでした。これは一見うつ状態ではよく似ていますが、治療においては全く異なってきます。にもかかわらず、同じような治 療がなされていたり、また躁とうつの状態を繰り返して発症する躁うつ病であるにもかかわらず、躁状態の時だけをとらえて躁病として診断したり、同様にうつ 状態の時だけを診断してうつ病と診断しまうこともあります。したがって、正しい診断や治療がされなかったために、躁うつ病が悪化してしまうことになってい たのです。
◎日本での双極性障害はまだまだ研究途上にある疾患のため、その位置づけは今もって曖昧です。事実、双極性障害をうつ病に含める傾向もある一方で、うつ病は 双極性障害のひとつではないかという考え方もあります。少しずつではあるが、その後の研究によって双極性障害の病態が徐々に明らかになってきている面もあ ります。そうした中で、双極性障害かもしれないとわかったら、早く手をうつことが大切です。この病気で失うものは決して小さくありません。時によっては、 仕事や家族、社会的な信用や財産を失うばかりか、最悪の場合は命まで失うケースもあります。
◎他の病気もそうですが、特に双極性障害はうつ病と比べるとやっかいな病気だけに、早期発見と早期治療が重要となってきます。それは次の2つの意味で重要で す。1つは「社会生活上の損失を少しでもくい止めるため」です。特に躁状態では、人間関係を悪化させて職場をクビになったり、金遣いが荒くなって破産した り、離婚したりするケースが多いからです。2つ目は「治らなかったうつ状態が改善する可能性がある」ということです。うつ病の治療薬である抗うつ薬は、双 極性のうつ状態にはあまり効かないこともあり、早期発見で治療法を見直して、うつ状態を改善することは可能となります。
◎双極性障害が招く深刻な事態が分かってきたため、近年、双極性障害は重大な疾患であるという認識が医師の間で高まってきており、精神医学会でも注目されて いる疾患です。たしかに双極性障害は、うつ病に比べたら一般的にはまだまだ知られていない病気ですが、双極性障害自体はけっして稀な病気ではなく、身内や 友人、また職場や地域において見聞きする機会が最近多くなってきています。今後、ポピュラーな精神疾患になることも予想されます。