不眠症の原因は多彩です!
「不眠症」と一口に言っていますが、その症状・病型・原因は多岐に分かれます。
大雑把な表現をすれば、不眠症とは心の病の共通症状。風邪の発熱と同じです。
ですから、不眠症が有る方は、自分に心の病が隠れているのだとお考えください。
不眠症を症状で分類すると、
①寝付きの悪い「入眠困難」タイプ
②夜中に目が覚める「途中覚醒」タイプ
③朝早く目が覚める「早期覚醒」タイプ
④夢にうなされ続ける「熟眠欠如」タイプ
と、これらの混合タイプに分かれます。
不眠症の原因疾患
①躁病やうつ病などの気分障害
②適応障害などのストレス障害
③自閉症などの発達障害
④認知症など器質的障害
⑤薬物等の依存と離脱症状
⑥統合失調症
不眠症の様々な症状
①ベッドに身体を横たえても眠れず、ごろごろ寝返ったり眠ろうと焦る。
②夜中に途中で目を覚まし、再び眠ろうとするがもう眠れない。
③朝早く目覚めてそのあと普通に起きる時間まで眠れずにいる。
④眠りが浅くて、ずっと夢にうなされているような半眠半覚醒が続く。
不眠症の方の多くで、睡眠と覚醒の日内リズムが乱れています。
正常な睡眠パターンは、下記の図のように、ステロイドホルモン(コルチゾール)と松果体ホルモン(メラトニン)の相互の分泌リズムから生まれます。この日内リズムが乱れると不眠症が発生します。
不眠症を悪化させる生活習慣の例
①ベッド・布団にはいる直前までテレビや映画を観ている。
②布団の中でパソコンや携帯電話の強い光を見ている。
③眠気がくるまで、何時まででも、何かの活動を続けている。
④眠くなる前にテレビや映画を見ながら時間を潰している。
⑤音楽やラジオ番組を聴きながら眠る癖がある。
⑥寝る前に激しい運動をしたり熱いお風呂に入ったりする。
⑦電灯や蛍光灯の灯りをつけたままで眠る癖がある。
⑧パソコンや携帯電話を使いながら眠くなるのを待っている。
⑨夜に仕事や生活の重要なことや解決困難なことを話し合う。
⑩長い昼寝をしたり、夕方早く寝て夜間に目覚める癖がある。
⑪寝始める時間がいつも習慣的に深夜の12時を超えている。
⑫夜間活動が多く昼夜逆転した生活が身に付いてしまっている。
不眠症の治療
①原因疾患を突き止めて、その病気に応じた治療が必要。
他の科で不眠症治療を受けている患者さんに共通してみられる失敗例は、原因疾患を分析せずに、単に睡眠薬を無差別・無制限に処方されていることです。
②病的でない不眠症には、生活習慣の改善を第一に考える。
病的ではない不眠症には、上記の悪い生活習慣を改めることを第一の治療とします。その上で、正しい睡眠習慣を身につけるための補助的な役割で睡眠薬を処方します。
③治療が順調に進めば、早期に睡眠薬を中止して、依存症を予防する。
上で述べた無差別・無制限な睡眠薬の処方で、睡眠薬依存症に陥っているケースも多くみられます。このような失敗は初期からの正しい治療で防げたはずです。
④繰り返しになりますが、「不眠症には睡眠薬」という誤った治療をしない!
不眠症の影には、躁病、うつ病や統合失調症などの精神疾患が隠れていることがしばしばあります。このような場合は原因疾患の治療をまず優先しなければなりません。
不眠症は脳機能が弱っている事の現れです!
脳は働いて疲れると自然に眠るのではなく、脳を眠らせる「睡眠中枢」が働いて、一定のエネルギーを使って眠っているのです。ですから、脳機能が低下すると、共通の症状として不眠症が現れやすくなります。
一般によく使われている睡眠剤には、この睡眠中枢からの睡眠信号を伝達するGaba(ギャバ)の働きを強める薬効成分が含まれています。
しかしこの治療は根本的な原因治療でないことを忘れてはいけません。